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病理診断

膀胱がん(尿路上皮癌)のHER2発現検査について

こんにちは、病理診断科 診断獣医師の平林です。

夏の暑さも和らぎ、秋の匂いや気持ち良い風が感じられるようになりました。

動物たちも過ごしやすく、わんちゃんたちにとってはお散歩が行きやすくなりましたね。

私は秋の果物が好きなので、わくわくしています。

今回は、病理診断科で行っているHER2発現検査という少し特別な検査について、ご紹介します。

 

HER2発現検査は、膀胱がん(尿路上皮癌)に対する“ラパチニブ”という抗がん剤の効果を予測するための検査で、カテーテルや手術で採取した組織で行います。

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膀胱がんは尿路に最も多く発生する悪性の腫瘍です。

治療法は、外科切除、放射線治療、内科治療などがありますが、治療を行っても残念ながら半年〜1年程で亡くなることが一般的です。そのため、有効な治療法の開発が望まれてきましたが、近年、ラパチニブが犬の膀胱がんに対して有効な治療法になることが明らかにされました。

ラパチニブは、細胞の増殖に関わるタンパク質であるHER2とEGFRを阻害する分子標的薬です。

犬の膀胱がんでは、HER2の発現が高いとラパチニブがよく効き、生存期間の延長が期待できることが示されています。

検査では、HER2発現の程度をスコア化し、陽性、陰性の判定をしています。

獣医療におけるHER2発現検査は、まだ一般的な検査ではなく、ラパチニブを用いた抗がん治療は新しい治療法ですが、当院では検査体制を整え、結果をもとにラパチニブを含めた治療法をご提案しています。

知識、検査、技術を充実させ、わんちゃん、ねこちゃんに、より多くの治療法をご提供できる病院でありたいと思っています。

HER2発現検査やラパチニブを用いた治療法にご関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。

【参考文献】

  1. Maeda S, et al. Lapatinib as first-line treatment for muscle-invasive urothelial carcinoma in dogs. Sci Rep. 2022;12(1):4.
  2. Tsuboi M, et al. Assessment of HER2 Expression in Canine Urothelial Carcinoma of the Urinary Bladder. Vet Pathol. 2019;56(3):369-376.

 

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