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画像診断科

超音波検査時の「毛刈り」について

みなさん、こんにちは。

画像診断科の石川雄大です。

当院で超音波検査を受ける場合には、「毛刈りが必要」と担当獣医師よりご説明があるかと思います。

見た目の問題や、お腹が冷えてかわいそう、他の病院では毛刈りをしないで診てくれた など様々な理由でお腹の毛刈りに抵抗感を感じられたり、渋々ご了承いただくケースも多いかと思います。

それにも関わらず、日頃よりほぼ全ての飼い主様が毛刈りに対してご同意くださり、検査にご協力頂けることにこの場を借りて感謝申し上げます。

今回はそんな飼い主様に少しでもご納得頂いて検査を受けて頂けるよう、超音波検査と毛刈りの重要性に関してお話したいと思います。

まず超音波検査の原理を簡単にご説明します。

超音波とは目に見えない、耳で聞こえない音波を指しますが、機器のプローブより連続的に発せられています。

しかしただ発生するだけでは画像は得られず、臓器にあたり反射した音波を受け取ることで画像化しています。

(嚙砕いたつもりでも難しくてすみません・・・)

つまり、しっかりとした画像の情報を取得するためには

①生体内にしっかりと音波が届くこと(往路)

②反射した音波をしっかりと受け取れること(復路)

この往復において超音波の情報がより多く、質が高いことが非常に重要となります。

では改めて、毛刈りがどうして必要なのか?

被毛があることで、超音波プローブと皮膚との間に傷害物(毛、空気)やスペースができてしまいます。

これは、

 

往路では、生体内に届く音波が減少する

復路では、反射した音波を受け取る際にも傷害物によってその情報がさらに減弱する

 

ことを意味し、これでは情報量の多い正確な画像が得られません。時とし病変の見落としや誤解釈に繋がりかねない状況と言えます。

つまり正確な画像を得るためには プローブと皮膚をしっかりと密着させることが重要であり、動物の場合には、このためには毛刈りは欠かせない前処置となります。

普段検査を実施する際には毛刈りを行った上でアルコールスプレーやゼリーを使うことでさらに細かな気泡や空間をなくし観察を行っています。

「質の高い画像を得る」ということは小さな病変や細かい変化を捉える上で非常に重要であり、早期発見や確実な診断に近づく第一歩となります。

実際に毛刈りを行わずに観察した画像と毛刈りを行った画像を見比べてみましょう

202351985514.png

写真①

202351985555.png

写②②

写真1は毛刈りを行わず超音波をあてた肝臓の画像です。

情報が減少し暗くザラザラした画像になっています。

残念ながらこの画像では臓器の色ムラや小さな変化は見つけることはできず、“大きな病変は”なさそうですとしか言えません。 

一方で写真2は毛刈りを行い超音波をあてた肝臓の画像です。写真1との違いは一目瞭然ですね。

いかがだったでしょうか?

とはいえバリカン負けで皮膚が赤くなってしまう敏感肌の子もいらっしゃいます。

れまでそのような経験がある方は遠慮なく担当医に申しつけください。

疑っている疾患や観察したい臓器、被毛の状況などで担当医と毛刈りの有無や範囲を相談させていただきます。

さいごに、

皆様それぞれ様々な悩み、症状を抱えられ、愛犬、愛猫もせっかく頑張って受ける検査ですので見落としや誤診があっては本末転倒です。

高度医療をお約束する専門医であるからこそ、常に高い精度と結果が求められていると感じております。

今後も日々妥協のない、質の高い医療を提供できるよう精進してまいります。

引き続き超音波検査の際には毛刈りに対するご理解とご協力をお願いいたします。

 

 

 

 

 

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