ホーム>飼主様向け情報>よくあるペットの病気>肺・心臓の病気

肺・心臓の病気

肺・心臓の病気

心臓について

心臓説明図

心臓は、血液を全身に送り出すポンプです。
図のように、4つの部屋と弁からなり、規則正しく収縮と拡張を繰り返すことによって、血液をスムーズに送り出しています。
弁は、血液が逆流するのを防いでいます。

 肺について


空気は、鼻や口から、鼻腔、気管、気管支を通って肺に送り込まれます。
肺は、血液中のガス交換を行う臓器で、全身から送られてきた血液中の二酸化炭素を排出し、酸素を与えて全身に送り出します。

犬に多い病気

僧帽弁閉鎖不全症

猫に多い病気

肥大型心筋症

僧帽弁閉鎖不全症(犬に多い病気)

犬で最も多い心臓病です。特に、高齢の小型犬に多く起こります。

僧帽弁は、左心室と左心房の間の弁で、左心室から大動脈へ血液を送り出す時に、血液が左心房へ逆流するのを防いでいます。
この弁が変性し、上手く閉まらなくなると、血液が左心室から左心房へ逆流します。
弁の変性は、5歳以下の犬ではまれですが、例外なのがキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルで、若くして弁の変性を起こすことが分かっています。

僧帽弁が上手く閉じなくなると、血液の一部が逆流してしまうことで、全身へ上手く血液を送り出せなくなります。
初期の段階では、心臓が頑張って働くことにより、全身には大きな影響はありません。
しかし、頑張り続けた心臓が限界を迎えると、血液を十分に送れなくなり、心不全の状態となります。

症状

早期の場合、無症状です。定期検診時などに、心臓の雑音によって発見されることがほとんどです。

1番最初に認められる症状は、咳です。
これは、逆流した血液によって風船のように膨らんで大きくなってしまった左心房が、その上にある気管支を圧迫することによって生じます。
痰を吐き出すような咳が、主に興奮時や、夜〜朝方に認められます。
更に病気が進んでくると、疲れやすくなったり、痩せてきたりといった症状が出てきます。

心不全の状態へ進行すると、肺の中で血液が鬱滞し、「肺水腫」となります。
肺水腫になると、酸素交換が上手く出来なくなるため、酸欠状態となり、呼吸が粗くなったり、舌の色が紫色になるチアノーゼが認められます。
また、不整脈による失神が認められることもあります。

治療

薬による治療と、手術による治療があります。手術については、非常に高度な技術と設備を要するため、実施している病院は限られています。当院でも、ご希望の方には他の施設を紹介させて頂いています。

薬による治療は、変性した弁が治るわけではないので、完治させることは出来ません。
病気の進行をゆっくりにして心不全になるまでの時間を延ばすことや、心不全の症状を和らげることを目標にした治療です。
基本的に、一生投薬が必要で、病気の進行に伴って、使用する薬も複数となることがほとんどです。
症状が出る前から治療を開始することによって、心不全になるのを遅らせることが出来るとされています。
そのため、定期的に聴診することによって、早期発見することが重要となります。

生活面での注意点

確実な投薬 薬を飲んでいる子の場合は、投薬の忘れが状態の悪化を招くこともあります。
温度、湿度の管理 心臓が悪い子は、高温・多湿が大敵です。
過度な運動を避ける 過度な運動は、心臓に負担をかけます。
適切な食事 塩分の多い食事は、心臓の負担になります。
呼吸回数や、舌の色を観察 少しでもおかしければ、すぐに病院へ連絡して下さい。

 

肥大型心筋症(猫に多い病気)

メイン・クーン、ラグドール、アメリカン・ショートヘアーなどで、遺伝する病気であることが分かっていますが、他の猫種でも起こります。
5歳から7歳の中年齢の雄に多いです。

心臓の壁が厚くなることで、心臓の中に十分な血液が入らなくなり、全身へ血液を上手く送り出せなくなります。
初期の段階では、心臓が頑張って働くことにより、全身には大きな影響はありませんが、心臓が限界を迎えると、心不全の状態となります。

症状

病気がかなり進行するまでは、ほとんどの子で無症状です。

心不全となり、肺水腫や、胸の中に水が貯まると、呼吸が速くなったり、食欲が落ちたり、あまり動かずじっとしていることが多くなります。
失神したり、急死することもあります。また、血がうっ滞することにより、血栓が出来やすくなります。
血栓は、肺や腎臓、足の血管につまります。肺につまると呼吸が苦しくなります。
腎臓につまると血尿が出たり尿が出なくなります。足の血管につまると、足が急に動かなくなり、非常に痛がります。

全ての子で心臓に雑音が認められるとは限らないため、心臓の音が正常でも、油断できません。

メイン・クーン、ラグドール、アメリカン・ショートヘアーなど、この病気になりやすい子は、中年齢になったら、定期的に心臓の検査を受けることが勧められます。
また、兄弟や両親に、この病気になった子がいないか確認するとよいでしょう。

治療

薬による治療になります。手術で治すことは出来ません。

薬で、病気の進行をゆっくりにして心不全になるまでの時間を延ばすこと、心不全の症状を和らげることを目標にします。
病気がある程度進行すると、血栓が出来やすくなるので、血栓の予防薬も使用します。

なお高齢の猫ちゃんでは、腎臓や甲状腺の問題で、心臓の壁が厚くなることもありますが、その場合は、原因となっている病気を治療してあげることにより、心臓の壁も薄く戻ることがあります。