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腫瘍(がん)

軟部組織肉腫

軟部組織肉腫は動物の悪性腫瘍(癌)の一つのグループで、線維肉腫、血管周皮腫、神経鞘腫、脂肪肉腫などいくつかの腫瘍が含まれます。
これらの腫瘍は共通した特徴を持っているので、“軟部組織肉腫”というくくりで診断され、治療が行われます。

特徴

軟部組織肉腫イメージ

高齢の犬に多く発生します。
胴体や足などの体の表面に発生することが多く「なにかしこりがある」と気付くことが多いのですが、体の中にできることもあります。
腫瘍自体は痛みなどを伴わないことが多いのですが、発生部位や大きさによってはまわりの器官に影響を与え、様々な症状が出ることがあります。

この腫瘍の特徴として腫瘍の“根”が深く(局所浸潤性が強い)、再発率が高いということがあります。
悪性の腫瘍からは目に見えない根が周囲に伸びています。
目に見える(触れる)しこりだけを手術で取っても、目に見えない(触ってもわからない)根が残ってしまうと再発してしまします。
軟部組織肉腫はこの根が深く広く伸びていることが知られています。

 また、悪性腫瘍の特徴に転移というものがあります。
転移とは腫瘍が他の部分(リンパ節や内臓など)にも移動して、進行してしまうことです。
転移を起こしてしまうと、手術でしこりをとっても腫瘍は治りません。
軟部組織肉腫は比較的転移が起こりにくいという特徴(悪性度によって異なる)を持っています。

軟部組織肉腫の特徴をまとめると、根が深く広いためそれを手術で全部取るのは大変(傷がとても大きくなる)ですが、転移が比較的起こりにくいため十分な手術ができれば完治することもめずらしくありません。

悪性度

軟部組織肉腫の悪性度はいくつかの要素から評価します。
その要素をもとに完治が見込めるかどうかどうか、再発や転移を起こしてしまうかどうか、といった治療経過の予測が行われます。

≪悪性度を評価する要素≫

1.腫瘍の大きさ 大きいもののほうが悪性度が高い傾向をとる
2.組織学的グレード 切り取った腫瘍の組織検査により悪性度が3段階に分けられる
3.周囲との固着 固くくっついているものは悪性度が高い傾向をとる
4.転移の有無 転移があると完治が難しい
5.手術内容 根も含めて完全にとりきらないと再発しやすい

検査・診断

1. 針吸引検査

しこりはまず針吸引検査による細胞の検査を行います。
軟部組織肉腫やその他の腫瘍の疑いがあるかどうかを調べます。
この検査だけで診断のつく腫瘍もありますが、軟部組織肉腫では十分な診断が得られない場合も多いです。
この検査で軟部組織肉腫が疑われた場合には 2 の生検という検査を行い、診断を確実なものとします。

2.生検・ステージング検査

手術前に十分な診断をつけるために生検という検査が必要です。
生検は手術によりしこりの一部をくりぬいて病理組織検査を行う方法です。
また転移がないかどうか、他に病気がないかどうかなどを調べる全身検査や、腫瘍の広がりを調べて手術計画を立てるためのCT検査なども行います(ステージング検査)。

血液検査 貧血の有無や内臓の状態などを調べる
血液凝固系検査 きちんと血が止まるかなどを調べる
レントゲン検査(胸腹部) 胸やお腹に転移や他の病気がないか調べる
超音波検査(腹部)
尿検査 腎臓の状態などを調べる
血圧測定 高血圧症などを調べる
CT検査 ※麻酔 細かい転移を調べる
腫瘍の広がりを調べ、手術計画を立てる
リンパ節針吸引検査 リンパ節に転移が無いか調べる
生検 ※麻酔 小手術でしこりの一部をくりぬいて調べる

3.手術後の確定診断

手術で摘出した腫瘍を病理組織検査にだします。
腫瘍全体を調べて最終的な確定診断を行い、手術で腫瘍が十分にとりきれているかなどを判定します。

治療

治療で最も重要なものは手術です。
最初の手術でいかに腫瘍をとりきるかが大切です。
すでに転移を起こしている場合、手術が難しい場合、悪性度が高い場合などに放射線治療や抗がん治療なども行います。

1.手術

目に見えない腫瘍の根も含めて大きく手術を行う必要があります。
そのため手術で切り取った部分の傷を塞ぐのが大変になる場合もあり、傷を閉じるための再手術が必要になったり、傷が治るのに長い時間がかかることもあります。

2.放射線治療

腫瘍に放射線をあてて腫瘍細胞にダメージを与える方法です。
手術の補助や、緩和的な治療として行うことがありますが、単独で完治を目指せる治療法ではありません。
実施する場合には専門施設をご紹介します。

3.抗がん治療

抗がん剤を使って腫瘍細胞にダメージを与える方法です。
手術の補助や、緩和的な治療として行うことがありますが、単独で完治を目指せる治療法ではありません。