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神経・筋肉の病気

環椎軸椎亜脱臼

環椎軸椎亜脱臼とは



頸椎のうち第一頚椎を環椎、第二頚椎を軸椎といいます。
通常、脊椎と脊椎は椎間板が間に挟まってクッションの役目を果たしていますが、この2つの頸椎間には椎間板が存在しておらず、4つの靭帯によって支えられています。
生まれつき、あるいは外傷などによってこれらの靭帯の形成に異常が起こるとこの2つの椎体が亜脱臼を起こし、脊髄が圧迫を受けます。

症状


犬の環椎軸椎亜脱臼は大半が生まれつきの靭帯形成異常によるものであり、半数以上が1歳未満に初期症状を示します。
中には成犬になってからちょっとした怪我や激しい遊びなどによって症状を起こし始める事もあります。
患者の大多数がチワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、ダックスフント、マルチーズなどの小型犬種ですが、中型犬以上でも認められる事があります。
猫ではあまり報告がありませんが、馬やラクダなど様々な動物種で起こります。
患者は頭部を動かすと激しい痛みを感じ、頭を触られることを嫌がります。
また、骨と骨が不安定なので些細な運動や衝撃で急激な症状の悪化がみられる事があります。
症状が進むと起立不能となり、四肢だけでなく呼吸をする筋肉に麻痺が出ると呼吸困難になって生命に関わる事態となります。

診断

本症の疑いがある患者の診断には頸椎のレントゲン検査およびMRI検査が必要で、患者の取り扱いには細心の注意が必要です。
MRI検査には全身麻酔が必要となりますが、頸椎が不安定な可能性がある患者の麻酔下でのケアには十分な注意が必要で、経験の多い専門的な医療チームによって行われるべきです。
場合によっては骨の形状を把握するためにCTスキャンなどを診断に組み合わせる事もあります。
レントゲン写真上は本症のように見えても、MRIとCT検査で頭蓋骨と環椎の間の関節に起こる別の異常であると判明する事もあります。

治療


症状が軽度であったり若い動物の場合には場合によって安静と首のコルセットを数週間装着する事で症状に改善が見られる事がありますが、ちょっとした運動などで再発あるいは悪化する事が懸念されます。
一般的には手術によってこの2つの頸椎を固定する方法が最も有効な治療方法だと考えられています。
手術は骨に特殊なピンを数本挿入して骨セメントで固める方法が最も成績が良いですが、患者の大きさや年齢によっては骨が柔らかすぎて手術が困難な事もあります。
また、患者の状態によっては治療に大きな危険が懸念される事もありますので、獣医神経科医への早期のコンサルタントが強く推奨されます。

術後は骨同士が癒合するまでの間(一般的には6-8週間)自宅にて安静が必要です。

環椎軸椎亜脱臼 術後レントゲン写真

術後レントゲン写真

環椎軸椎亜脱臼 術後CTスキャン

3D再構築したCTスキャン