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消化器・泌尿器科

猫の尿管結石

皆様、こんにちは。

消化器・泌尿器科を担当している獣医師の庄山俊宏です。

ここ最近急激に暑くなり、わんちゃんや小さなお子様は熱中症に注意が必要となる時期になってきました。

私ごとではありますが、毎年この時期に思い出すのが尿管結石を患った時の痛みです(^ ^;)。

6年前の今頃の夜中に、私の背中らへんに突然激痛が走りました。

我慢ができなくなり、救急車を呼び、病院でCT検査を実施しました。

原因は尿管結石と判明し、内科治療ですぐに良化し事無きを得ましたが、いつ再発するか内心ドキドキしています。

そんな尿管結石はわんちゃん、ねこちゃんにも起こる病気です。

私が泌尿器科を担当している事も関係していると思われますが、近年猫における尿管結石が非常に多くなっている印象です。 

尿管は尿を作る腎臓と尿をためる袋の膀胱の間にある尿を運ぶ管を指します。

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人間の尿管の太さは5mmから1cmと言われていますが、ねこちゃんの尿管の太さは平均1mm程度(内腔は0.8mm程度)と非常に細いです。

1mmの管といってもピンとこないかもしれませんが、1円玉や10円玉の厚さが1.5mmなので、それよりも更に細い管状の構造物とイメージしてもらえればと思います。

そんなねこちゃんのほそ――い尿管には1-3mmの小さな結石がよく詰まります。

下の写真は摘出した結石ですが、こんな小さな結石のせいで生死の境をさまようねこちゃんが世の中にたくさんいます。

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下のレントゲンに写っている尿管結石は2mm程度の石です。

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猫の尿管結石はどの品種にも起こり得ますが、アメリカンショートヘアやスコティッシュフォールドによく発症するというデータが麻布大学から出ており、経験的にも同じ印象です。

人は私のように激痛が伴い病院へ行きますが、動物は人ほど痛みが強くないとされています。

実際に尿管結石があるねこちゃん達を診察しても痛みを検出できる事は少ないです。

猫の尿管結石が発見される時は、健康診断や定期検査で見つかる場合もしくは腎臓の値が高くなり具合が悪くなる場合に分かれます。

病院に来院する尿管結石のねこちゃんの9割以上は具合が悪くなった状態(腎臓が悪くなっている状態)で発見されます。

つまり、早急に治療が必要な事が多いです。

 

猫の尿管結石の治療法は結石が1mm以下であれば、内科治療(お薬や点滴など)で良くなる可能性があります。

しかし、1mm以上の尿管結石は尿管の太さより大きいため内科治療がうまくいかない場合が多いです。

その場合は手術をして尿管結石を摘出する場合があります。

尿管結石が詰まっている尿管の太さは2-5mm程度と通常の尿管と比較して太くなっていますが、肉眼での手術は困難です。そこで、当院では手術用の顕微鏡を使用して尿管を切開し、結石を取り出しています。

手術用顕微鏡を使用すれば最大16倍まで拡大でき、髪の毛より細い糸で尿管を確実に縫合する事が可能になります。

そして、顕微鏡を使用する事で尿管の手術の合併症を減らす事が可能になり私にとってなくてはならない医療器具の一つになっています。

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尿管結石の治療法が向上する事も大事ですが、尿管結石の予防や早期に発見し早期に治療する事も大事かと思います。

ねこちゃんの尿管結石は時に重度の腎不全を引き起こし、命を落としてしまう可能性がある怖い病気の一つだからです。

 

我が家にも2頭のねこちゃんがいますが、赤ちゃんと触れ合っている姿をみると心があたたかくなり、長生きしてほしいなあとよく思います。

最後にうちの猫達を健診してから1年が経過しようとしており、そろそろ健診の時期かなと考えています。

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健診は尿管結石以外の疾患も早期に発見できる可能性があります。

皆様にとって家族の一員であるわんちゃん・ねこちゃんのためにも、病気がなくとも最低でも1年に1回は健康診断(血液検査や画像検査など)をうけてみてはいかがでしょうか?

 

 

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