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腫瘍科

診察室の奥で覗き見ているもの。

こんにちは、獣医師の前田です。

昨年10月より腫瘍科で勤務しています。

さて、ワンちゃんも猫ちゃんも大切な家族の一員でありスキンシップは欠かせませんよね。

私自身、帰宅するといつも真っ先に飼っている猫のお腹に顔を埋めてリラックスさせてもらっています。

体を撫でている時に、「あれ、何か触れるぞ。これは何だろう。。」と謎のできものを見つけてしまうことがあるかと思います。できものと言っても色々な種類のものがあり、もちろん何かの“がん(悪性腫瘍)”であることもあります。

不安になりますよね。

そんな時は我々獣医師にご相談ください。

できものの大きさ、発生部位、状況(破裂したり化膿したりしているか)にもよりますが動物の負担が少なく迅速に実施可能な検査法の一つとして“針生検”というものがあります。

採血で使用する細い針を使って、できものから細胞成分を採取し顕微鏡で観察するという検査です。

実際にどんなものを見ているの?と、思いますよね。

今回は、診察室の奥で我々が何を見ているのかについて一部ご紹介します。

 

まずは針生検の手順について、

①できものを発見します

→②触ったり、大きさを測ったりしてできものの状況を確認します

→③針で刺します

→④スライドグラスに採取した細胞を吹き付けて、染色します

→④さあ、顕微鏡で見てみましょう!

顕微鏡を覗くと見えてくる細胞達です。

丸い形が主体のものや・・
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長細く伸びてあまり固まっていないもの・・
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ぎゅっと塊状になっているもの・・
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色々な形をしたものがあります。

典型的な形態を示す腫瘍(肥満細胞腫、リンパ腫など)は針生検のみで診断することもありますが、多くの場合は「〇〇っぽい。」という所までしか判断できません。例えば、「似たような形態をした細胞ばかり見えるので、腫瘍っぽい。」とか、「様々な炎症性細胞が混在して見えるので、炎症性のものっぽい。」とかです。

このような場合、確定診断のためには最終的に組織を一部切り取る切除生検をしたり、治療を兼ねて、できものそのものを切除することが必要となりますが全身麻酔で実施しなければなりません。

全身麻酔や手術は、程度にもよりますが、動物達の体に負担をかけるものです。

しかし、できものが悪性腫瘍であった場合は放っておくとどんどん大きくなったり、いつの間にか遠隔転移を起こして治療適期を逃してしまう可能性があります。

麻酔、手術を行うことで得られるメリット(診断がつく、治療ができる)とデメリット(麻酔リスク、体の負担)を天秤にかけて治療方針を決定しなければいけません。

その際に「〜っぽい。」という客観的な情報が一つあるだけでも、積極的な検査や治療を進めるか、少し経過を見てみるか、という判断の助けになるかと思います。

動物達の健康状態も様々であり、容易に判断できないことがほとんどです。

そのような場合は気軽に私達にご相談ください。

自分達の知識、経験をもとに動物達とご家族が納得できる治療方針を共に考えていきたいと思っています。

正体のわからないものをそのままにしておくことは思っている以上に不安になるものです。

今回ご紹介した針生検自体は麻酔もなく気軽に行える検査であり、確定診断までは難しいものの、何となーく正体がわかるだけでもご家族の心は落ち着くと思いますし、その後必要なことについて前向きに考えることができることと思います。

特に腫瘍科を受診される患者様は悪性腫瘍を患い、難しい状況にあったり、厳しい選択を迫られることもあり不安を抱えて来院されていると常日頃感じています。

私自身も獣医師になってからずっと共にしている家族(猫)がおりますので、その気持ちが痛い程に分かります。

動物達とそのご家族の不安を少しでも和らげてあげられるよう常に心がけ、今後も診療にあたっていきたいと思います。

とりあえず、本日も早く自宅に帰って猫のお腹に顔を埋めて、健康であることのありがたさを感じさせて頂こうと思います。

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