総合診療科
下痢・嘔吐について
初めまして。
今年の1月から総合診療科で勤務しております、獣医師の橋本龍之介です。
わんちゃんを飼っていると比較的よく見られる症状と言えば下痢・嘔吐ではないでしょうか?
若い子から、高齢な子まで、幅広い子が下痢・嘔吐に悩まされることがあると思います。
当院においても、来院される症例の中で1~2を争うほどの件数が下痢・嘔吐を主訴として来院されます。
そこで今回は、一般的な治療を行っても改善が認められず、長期的に下痢・嘔吐に悩まされている子たちについて、どのように考え、どのような検査をし、どのような治療が必要になってくるかを簡単ではありますが、説明させていただければと思います。
わんちゃんに慢性的に消化器症状を引き起こす原因不明の慢性胃腸炎は、慢性腸症と呼ばれます。
慢性腸症は
食事を変えることによって症状がよくなる場合。
抗生剤を飲むことで、症状が良くなる場合。
ステロイドなどの免疫抑制剤を飲むことで症状が良くなる場合。
残念ながら治療に反応しない場合。
の4つに分けることができます。上から順に当てはまる可能性が高く、一般的な治療に反応しないような子はわずかしかいないと言われています。
そこで、まず一般的な下痢止めや吐き気止めで症状が良くならず、便検査や超音波検査などで異常が見られない場合は、食事を消化器用の療法食に変えてみることをお勧めしています。
療法食に変更し、2週間程度経過しても改善しない場合は、抗生剤の内服を開始します。
それでも改善しない場合は、内視鏡検査をお勧めしています。
内視鏡検査では、胃腸の粘膜の観察と同時に、組織を一部取って病理検査を実施することで、がんが隠れていないかどうかなどを調べることが出来ます。
麻酔をかける必要がある検査ですが、免疫抑制剤が必要なタイプの腸炎は、ステロイドや免疫抑制剤を長期的に内服する必要がありますので、本当にステロイドが必要なのか、そのほか一般的な検査ではわからないような疾患が隠されていないかどうかをチェックすることは重要だと思われます。
そのため内視鏡検査を行い、その結果を元に治療を開始していく形となります。
この写真は慢性腸炎と診断された子の内視鏡画像です。
腸の壁がボコボコとしており、所々出血しているのが分かります。
よく見られる下痢・嘔吐ですが、いつもの治療で良くならない。
なぜか下痢や嘔吐が続くようなことがあれば診察にいらしていただければと思います。
症状が長引く場合は不安が募るばかりだと思います。
そのような飼い主様に寄り添い誠心誠意、診察・治療していきたいと思っています。
犬のニキビダニ症について
こんにちは。獣医師の藤森です。
今回は犬のニキビダニ症についてお話しします。
ニキビダニみなさんは聞いたことがあるでしょうか?
人では顔ダニと呼ばれたりしていて多くの生き物の体表に住んでいます。
普段は仲良く共存しているニキビダニですが、時に異常に増殖し、脱毛や皮膚炎の原因になります。
症状としては顔、足先などで脱毛、フケ、色素沈着などが見られます。
検査は症状のある部分の毛を少し抜いて顕微鏡で見ます。
そこで問題です。ニキビダニは次の写真のどこにいるでしょうか?
正解はこちらです
はっきり見えるものだけでもこんなにたくさんのニキビダニがいます。
異常に増えたニキビダニは普段使用しているフィラリア予防薬で減らすことができますが、予防薬の種類によってはニキビダニを十分駆虫できないこともあるので注意が必要です。ただの脱毛、皮膚炎にとどまらず2次的な感染がひどい場合は元気がなくなり、食欲不振になることもあるので小さなニキビダニたちですが侮ってはいけません。
ニキビダニは免疫力が低下している子で起こりやすいので、1歳未満の子犬や基礎疾患を持っている子は気をつけましょう。
高血圧について
こんにちは。獣医師の島岡です。
今年は、新年早々からここ入間市でも初雪が降りました。 寒い日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、高血圧に関するお話です。 日本では高血圧患者が多く、平成30年に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査報告」では、 40~70歳の高血圧有病率【140/90 mmHg (最高血圧/最低血圧)以上または降圧薬服用中】は、男 性で63.2%、女性では41.5%、75歳以上では男性、女性はほぼ同じで約78%と報告されています。
血圧が高めの人は、寒さを感じたり冷たい水にさわったりした時などは、血圧がさらに高くなり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす恐れがあります。寒い屋外に出たとき、暖かい部屋からト イレや脱衣場など寒い場所へ移動したとき、熱いお風呂に入ったとき、夜間トイレに起きたとき や早朝に起きたときなどは特にご注意ください。
高血圧はわんちゃん、ねこちゃんにとっても要注意です。
高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧があります。日本人の大部分の高血圧は、血圧上昇の原 因となるような病気がない本態性高血圧であり、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、スト レスや遺伝的体質などが組み合わさって起こると考えられています。
一方、わんちゃん、ねこちゃんの場合は、基礎疾患(おおもとの病気)があって高血圧を起こす 二次性高血圧が一般的です。
わんちゃんでは副腎皮質機能亢進症や腎疾患、ねこちゃんでは甲状腺 機能亢進症や腎疾患が原因となっていることが多いです。
高血圧を放置しておくと、眼・中枢神 経・腎臓・心臓などに組織障害が起こり、下記のような徴候が現れることがあります。
眼:失明、出血、網膜剥離、緑内障、二次性角膜潰瘍
中枢神経:脳血管障害、発作、失神
腎臓:多飲多尿、腎臓機能障害の増悪
心臓:左室肥大、心雑音
わんちゃん、ねこちゃんの血圧の正常値は最高血圧が100~150 mmHg、最低血圧が60~100 mmHg です【ただし、わんちゃんの血圧には犬種差があり特にハウンド種(グレイハウンド、ディ アハウンドなど)は雑種犬に比べて10~20 mmHg は高いと言われています。一方、ねこちゃんで は猫種の影響は観察されていません。】。
副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病などの疾患は高齢の動物に多いですが、潜 在性であることもあります。そのため、血圧測定によって基礎疾患の発見、治療につながる可能 性があります。
当院では、動物の足や尾などに血圧測定用のバンド(カフ)を巻いて、安静にしている状態で5 回以上血圧を測定して平均値を出します。
これを機に、血圧測定にご興味を抱かれた方がいらっしゃいましたら、ご遠慮なく当院スタッフ へお尋ねください。
● 院内猫の”ししゃも”です。
輸血前のクロスマッチ試験
こんにちは。獣医師の渡邊です。
座古先生に引き続き、血液に関するお話です。
後半は輸血を行う前のクロスマッチ試験に関するお話をします。
前半では、犬にはDEA1.1という血液の型があり、これが(+)と(−)に分類されることをお話ししました。
では、輸血が必要なわんちゃんがいる時に、血液型が合えば、すぐに輸血が可能になるのか。
実は、血液型以外にも交差適合試験(クロスマッチ試験)というものが必要になります。
さて、この話をするには、DEAに関してお話ししなければなりません。
赤血球の表面には、自身が赤血球であることを証明するマーカー(抗原)が複数あります。
そのうち、最も強い抗原抗体反応を起こすものがDEA1.1であり、まずはこれを調べて大まかな分類を行います(血液型分類)。
しかし、いくら抗原抗体反応が比較的弱いとはいえ、他のマーカー(DEA3、DEA4...)は区別しなくても良いのでしょうか?
輸血をするということは、ドナー(血液をくれる子)の血液をレシピエント(血液をもらう子)に入れること、つまり臓器移植と同じです。少し慎重になって考えてみる必要があります。
ここで、交差適合試験(クロスマッチ試験)の登場です。
簡単にいえば、ドナーとレシピエントの血液を混ぜ合わせ、拒絶反応が起きないかを確認しています。
最も重要なのは、レシピエントの免疫が、ドナーの血液を攻撃しないか、ということです。
せっかく入れた血液が、免疫により攻撃され、体内で分解されていくことは、レシピエントの体に負担がかかり、さらに体調を悪化させてしまいます。
つまり、これら2つの検査(血液型の合致、クロスマッチ試験)が問題なければ、そこで初めて輸血が可能となるのです。
これらが合わない場合、輸血を実施することはできません。
そのため、1頭のレシピエントに対して、ドナーの候補が複数必要になります。
当院では大きな手術や血液の病気を抱えている子も多く、輸血が必要になることが多いです。
供血犬としてすでにご登録いただいている子も複数いますが、それでも血液が不足しているのが現状です。
1人でも多くの命を救うために、献血にご協力いただける方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡・ご相談いただければと思います。
血液型について
こんにちは、獣医師の座古です。
今回は血液について前半後半に分かれてお話ししたいと思います。
前半は血液型についてです。
犬には13種類以上、猫には3種類の血液型があります。
今回は犬について詳しくお話しします。
人はABO式で4種類(A、B、O、A B)ありますが、犬はDEA式という分類になり、全部で8種類のDEA(犬赤血球抗原)があります。それぞれが+(抗原を持っている)なのか−(抗原を持っていない)なのかの組み合わせで血液型が決まります。
犬の血液型は非常に複雑なのです。
DEA1.1という型の血液型測定は、院内で測定可能です。
早速血液型を調べてみましょう。
このようなキットを使って検査します。
希釈液と血液を混ぜ合わせることで、5分くらいで結果がわかります
このわんちゃんは血液が粒々(凝集)しているので、DEA1.1(+)と分かります。
サラサラ(凝集していない)しているとDEA1.1(−)です。
血液型は輸血をする際に非常に大切な検査項目となります。
ちなみに猫はA、B、ABの3種類になります。
院内猫のししゃもはA型
うずらはB型です。
当院では、輸血を必要とする子、ドナーとなってくれるわんちゃん、ねこちゃんには、まず一般の血液検査と血液型の検査を実施しています。
一つでも多くの命を救うために、もし献血にご協力いただける方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡・ご相談頂ければと思います。
後半は輸血をする際の適合試験(クロスマッチ)についてお話しします。
お楽しみに!
ペットの急変に備えてお家でしておくべきこと
こんにちは、獣医師の中嶋です。
今日はペットが急変してしまい、普段受診したことのない病院を受診しなければいけなくなったときのためにお家でできる準備についてお話しようと思います。
病気やケガは時間を選びません。
夜間に急に具合が悪くなったり、かかりつけの病院の休診日に具合が悪くなってしまうこともあります。
そういう時に備えて今からお話しする4点はお家で準備しておくとよいでしょう。
①過去の病気をまとめておきましょう
過去に治療した病気の診断名、時期と期間は獣医師に伝えられるようにしましょう。
病気の中には繰り返し起きるものや数年かけて具合が悪くなる病気もあります。
今回の症状とは関係ないと自己判断せず、獣医師に伝えるようにしましょう。
②治療中の病気をまとめておきましょう
現在治療中の病気がある場合は急変と関係している場合が十分に考えられます。
診断名をしっかりと把握しておきましょう。
③検査データはまとめておきましょう
病院で貰った検査結果データはまとめて保管するようにしましょう。
緊急受診する際はそれらのデータも持っていくようにしましょう。
血液検査を評価する際には、その時点での数値はもちろん大切ですが、過去のデータとの変化も重要な情報となります。
④服用しているお薬・投与したお薬の名前を知っておきましょう
「下痢止め」や「痛み止め」、「抗生剤」といった情報だけでは、実際に何の薬剤を投与したのかわかりません。
薬の中には同時に使用すると副作用が出てしまうケースや薬の効果を減退させてしまうケースがあります。
可能であれば、治療してもらった先生に、使用した薬の名前を教えてもらいましょう。
また、内服薬を処方された場合には、実際にお薬を持参して頂くと、何のお薬かわかるかもしれません。
ストレスで膀胱炎!(猫の特発性膀胱炎について)
獣医師の福島です。
猫ちゃんを診察していて多い病気の一つに膀胱炎があります。
膀胱炎とは、膀胱が何らかの原因で炎症を起こして排尿の時に痛みがおこる病気です。
原因となるものはいろいろあります。
①結石
②細菌
③特発性
④その他(できものなど)
膀胱炎になると排尿の時に痛みを感じ、トイレで苦しそうにしている姿を目撃します。
【主な症状】
トイレに入ったり出たりを頻回に繰り返す
少量のオシッコを何度もする(頻尿)
血の混じったオシッコをする(血尿)
排尿時に痛みがあり鳴く
排尿姿勢はとっているが尿が出ていない
動物病院では尿検査や画像検査などを行って原因を特定し治療します。
結石やできものなどは検査をすれば原因がはっきりします。
しかし、炎症が起きているにもかかわらず具体的な原因がはっきりしないものについては特発性膀胱炎と呼ばれ、現在、猫の膀胱炎の半数以上が特発性と考えられています。
原因はまだわかっていませんがストレスが関連していると言われています。
【猫がストレスを感じる原因】
環境の変化(引越し、家族構成の変化など)
工事などの大きな音が聞こえる
同居猫との関係(新しい猫を飼い始めた、仲が悪いなど)
長時間の留守番
トイレの問題(トイレが気に入らない、汚れているなど)
そのほか猫ちゃんによってさまざまです。
また猫ちゃんの性格によっては、少しのことでもストレスに感じてしまうことがあるので注意が必要です。
治療は、症状に合わせてお薬を飲んだり、ストレスを軽減する成分が入った食事、サプリメントなどを併用していきます。
一番はストレスになっているものを取り除いてあげることですが取り除くのが難しかったり、何がストレスになっているのかわからなかったり、性格的にストレスを受けやすい場合は、症状が治っても繰り返す可能性があります。
食事療法を続けたりサプリメントを試したり、リラックスできる環境を整えて暮らしやすく工夫してあげましょう。
ストレスをとるというのはなかなか大変な作業です。
私たちも知らない間にストレスを受けています。私たちも猫ちゃんも一緒です。
ストレスを軽くして少しでも快適に楽しく暮らせるよう一緒に考えていきましょう。
快適にゃ
満足にゃ
フィラリア(犬糸状虫)症の予防について
こんにちは、獣医師の高井です。
少しずつ気温も上がり、夏が始まろうとしています。
暑くなると蚊が多くなってきますよね。蚊と言えばやはりフィラリア症ですよね?
というわけで少し強引ですが、今日はフィラリア(犬糸状虫)症の予防についての話をしたいと思います。
多くの方がご存知かもしれませんが、フィラリア症は糸状の虫が心臓に寄生する病気で、蚊が媒介します。
蚊の体内に寄生しているフィラリア幼虫が吸血時にワンちゃん(ネコちゃんもなりますが、まれ)に移行することで感染が成立します。
それを予防するためにフィラリア症予防薬を毎月飲んでいるのです。
なぜ毎月なのか疑問に思われたご家族の方も多いのではないでしょうか?
そのことについて少し解説したいと思います。
実は予防薬を飲んでいても、フィラリア幼虫が寄生している蚊に刺されたワンちゃんはフィラリア幼虫に感染してしまうのです。
幼虫の段階では、皮下に感染しているため、特に症状は出ません。
その幼虫を、フィラリア症予防薬を飲むことで毎月駆虫しているのです。
しかし、予防薬は幼虫の限られた発育段階でしか完全な効果を発揮できません。
その限られた発育段階を過ぎてしまった場合、幼虫は成虫になり、血管内へ移動、最終的に心臓へ移動し、フィラリア症が発症してしまいます。
そのため、一回でも予防薬を飲み忘れてしまうと幼虫が成長してしまい、予防薬が効かずにフィラリア症になってしまう可能性があるのです。
フィライリア症は治療が難しいこともありますが、発症していることに気づかずに予防薬を飲んでしまうとショック状態になり、命に関わることもある怖い病気です。
長くなってしまいましたが、大切なことは
①毎月きちんと予防薬を飲む(当院では、最低でも4月末から11月末までの投薬をお勧めしています。)
②もし忘れてしまった場合はきちんと獣医師に報告をする
です。
余談ではありますが、フィラリアは世界中で500種類以上存在しており、今回お話した犬糸状虫はその1種類です。
ごくまれではありますが、犬糸状虫が人に感染した例も報告されています。
ワンちゃんとご自身を守るためにもしっかり毎月必ず予防薬を飲みましょう!
犬の熱中症について
こんにちは、獣医師の杉村です。
最近、気温がぐんぐん上昇してきて、夏が近づいてきた感じがします。
都内では熱中症患者が増え始め、新型コロナウイルスのワクチン接種会場では予防対策が進んでいるようです。
今回は犬の熱中症についてお話ししたいと思います。
熱中症とは高温環境が原因で意識障害や多臓器不全など様々な症状を起こします。
極度に気温や湿度が高いと、自力でできる体温調節が間に合わず高体温となります。
暑さや湿度以外にも水分不足や過剰な運動や興奮、年齢や犬種なども大きく関わってきます。
重症化すると命の危険があるため、予防が大切です。
<熱中症になりやすい犬の特徴>
・短頭腫(パグやフレンチブルドッグなど鼻の短い子たち)
・肥満気味の子
・毛の量が多い子
・仔犬や老犬
・呼吸器疾患や心臓病など持病がある子
<熱中症になりやすい状況>
・暑い時間の散歩やドッグラン
運動すると体温がどうしても上がってしまいます。また、人間よりも地面(アスファルトなど)から近いので地面からの熱を受けやすいです。運動は涼しい時間帯にしましょう。
・家の中や車の中
閉めきった家の中や車の中は高温多湿になりやすく危険です。
必要に応じでエアコンをつけてあげて下さい。
また、車中に残して買い物に行くなどはやめましょう。
・水分不足
普通のお水で構いませんが、好きな時に飲めるようにしてあげて下さい。
ぜひご家族の皆様には熱中症のリスクを知っていただき、予防に努めて頂きたいと思います!
熱中症になってしまったら早期治療が大事です。
体温が高くぐったりしている、高温環境にいた後に嘔吐など消化器症状が出てきたなど、熱中症を疑う症状があれば、お早めにご連絡ください。
体の表面のできもの
こんにちは。
獣医師の渡邊です。
少しずつ暖かくなってきて、過ごしやすくなりましたね。
今回は、体の表面のできものに関して少しお話しします。
体の表面、つまり皮膚にできるできものですが、たまに飼い主様から『小さいから大丈夫ですよね?』ということを聞かれます。
結論からお伝えすると、小さい=大丈夫ということはありません。
もちろん、年齢、犬種、できものの場所などを考慮して、ある程度の良性、悪性の可能性はお伝えできます。
しかし、最終的にはできものに針をさして細胞を採取しないと、様子を見ていいものか、さらに踏み込んで検査すべきものかはわかりません。
特に、皮膚にできる悪性腫瘍の1つ、肥満細胞種は『偉大なる詐欺師』という異名を持っています。
その名前の所以は、見た目や触感での特徴になります。日によって大きかったり小さかったり、柔らかかったり硬かったり、赤かったり白かったり、様々な特徴をもちます。
これには、肥満細胞がもつ顆粒から分泌される物質が関与しており、この反応によって起こる症状には『ダリエ徴候』という名前がついています。
体表の腫瘍は早期発見により完治できるものもあります。もし、体にできものを見つけた場合には、ご相談ください。
動物の身近な中毒
こんにちは、獣医師の中嶋です。
2月に入り、一段と寒さが増してきましたね。2月のイベントといえばバレンタインデー!
毎年この時期になるとチョコレートをもらえるかドキドキしてきます。
皆様もバレンタインデーに向けてお家でお菓子作りをする機会も増えるのではないでしょうか?
甘くておいしいチョコレートですが、ワンちゃんや猫ちゃんが食べてしまうと中毒症状が出てしまいます。
チョコレート中毒や玉ネギ中毒は有名ですね、ご家庭にあるような食べ物で中毒を起こしてしまう食材が他にもあるので症状と共に少しご紹介しようと思います。
【チョコレート中毒】
チョコレートの中に含まれるテオブロミンという物質が原因で引き起こされます。
接種量にもよりますが、不整脈や意識障害を引き起こし、最悪の場合死に至ります。誤ってチョコレートを摂取してしまった場合は早期に嘔吐させることが有効といわれています。
【玉ねぎ中毒】
玉ねぎに含まれる成分によって、赤血球が破壊され貧血を引き起こします。
症状は貧血による、口腔内粘膜の蒼白、頻脈、呼吸が早くなる、血尿などがあります。玉ねぎ中毒も早期に嘔吐させることが有効といわれています。
【ブドウ・レーズン中毒】
ブドウやレーズンによる中毒は2000年になってから指摘されるようになった比較的新しい中毒のため、知らなかった方も多いのではないでしょうか?
ブドウ中毒の原因物質はまだ判明していませんが、ブドウを摂取した犬で下痢や嘔吐などの消化器症状や腎不全を引き起こすことがわかっています。
【キシリトール中毒】
キシリトールは砂糖のかわりに使われる人工甘味料です。誤って犬がキシリトールを摂取した場合、インスリンという血糖値を下げるホルモンが過剰に分泌され低血糖を引き起こしたり、肝障害を起こす可能性があります。
今回紹介した食材は、中毒を引き起こす物質の一部に過ぎません、手作り食を作る場合は、ワンちゃんや猫ちゃんに与えてもよいものかしっかりと確認したうえで作ってあげるようにしましょう。
犬、猫の咳
こんにちは。獣医師の上嶋です。
診察時に、「咳は出ますか?」と伺うと、「犬、猫も咳をするんですか?」「犬、猫の咳、ってどんなの?人と同じような感じ?」というお言葉をよく頂きます。
犬や猫も、人と同じように咳をします。原因となっている病気により、咳の仕方が少し異なります。
<犬の咳>
犬で咳が出る病気として代表的なものは、気管虚脱、気管支炎、心臓病です。気管虚脱では、「ガー、ガー」と、ガチョウの鳴き声様の咳が出るのが特徴です。
興奮した時や、首が圧迫された時に出やすくなります。咳が止まらなくなると、体温が上がり、気道粘膜が腫れてしまい、呼吸困難に陥ることもあり、その場合は緊急治療が必要となります。
重度の気管虚脱の場合には、手術が適応となることもあります。
一方、気管支炎や心臓病では、「コホ、コホ」という乾いた咳が出ます。最後に「ゲー」と痰を吐き出す様な仕草をすることもあります。動物は、痰が出ても、上手く吐き出せず、飲み込んでしまうことが多いです。痰の量が多いと、「ゴボ、ゴボ」という湿性の咳が出ます。
<猫の咳>
猫で咳が出る病気で最も多いのが、喘息です。頭を伸ばし、乾いた高い音の咳が出ます。
痰が多くなってくると、犬同様、「ゴボ、ゴボ」という湿性の咳になります。
人の喘息と同様、空気清浄や加湿が大切となります。環境整備をしても咳がひどい場合には、内服薬やネブライザー療法が必要となります。
ご自宅で咳をしていても、病院では咳が出ないこともよくあります。
咳の様子をスタッフが確認出来るよう、可能であれば、咳の様子を動画に撮って診察にいらっしゃって下さい。
動物の認知症について
こんにちは、獣医師の宮本です。
今回は動物の認知症について簡単にご説明したいと思います。
人で一般的に認知症は知られているように、認知症とは脳の老化に関連した様々な行動の変化がでる病気です。
症状は、日中の睡眠時間が長くなり夜間の活動が増えたり、排泄の失敗、無目的な徘徊、馴染みのある人や動物を認識できなくなったりと様々です。
犬では13歳以上、猫では14歳以上で約50%が認知症の症状を1つ以上認める可能性があるため、
年齢を重ねて変わった行動が出てきたら、それは認知症の症状かもしれません。しかし、高齢になると認知症以外にも様々な病気にかかる可能性があるため、気になる行動があれば獣医師に相談してみてください。
環境の改善、食事、サプリメント、薬物療法を用いて治療しますが、認知症は治る病気ではなく徐々に進行してしまいます。
そのためある程度の認知力の改善や進行を穏やかにし、日常生活に支障が出ない程度に症状を抑えることを目標に治療していきます。
症状が進行し、夜泣きによるご家族の不眠、近所迷惑、動物の理解しがたい行動により、ご家族が身体的・精神的に疲弊する可能性もあります。動物が生活しやすいように治療を考えていくことは大事なことですが、ご家族にも負担がかからないような治療方針を提案できたらと思います。ご家族側の不安や悩みも共有し、ベストな治療を考えていきましょう!
ワクチンアレルギー
獣医師の福島です。
今回は、毎年受けているワクチンについてお話します。
わんちゃんは狂犬病ワクチンと混合ワクチン(5種・8種など)
ねこちゃんは混合ワクチン(3種・5種など)があります。
病気に負けない免疫をつけるためのワクチンですが、ワクチン接種後にまれにアレルギー反応を起こすことがあります。
《20分以内におこる重篤なアレルギー反応》
非常に稀な反応ではありますが、これはアナフィラキシーシュックで体の力が抜けぐったりし、嘔吐や尿便の失禁などの症状が起こり、命に関わる場合もあります。
すぐに治療を行う必要がある危険なアレルギー反応です。
《数時間経ってからおこるアレルギー反応》
目の周りやマズル、口の周りがパンパンに腫れる顔面腫脹(ムーンフェイス)や注射をした部位が腫れたり痛みが出たりすることがあります。このような症状は半日経ってから出ることもあります。
ねこちゃんの場合、発熱したり元気がなくなるという症状が数日後におこることもあります。
《ねこちゃんでもう一つワクチンで気をつけたい事》
ワクチン接種部位にしこりができることがごく稀にあります。
炎症だけの場合もありますし、肉腫になってしまうこともあります。ワクチン後に気づいたことがあれば早めに受診してください。
《ワクチンアレルギーになってしまったら》
すぐに動物病院にご連絡ください。
早急な治療が必要です。アレルギーを抑える注射、重症の場合は点滴治療や気管挿管なども行います。
今後のワクチン接種は獣医師と相談して決めていきます。
ワクチンの種類を変更したり、ワクチンを打つ前にアレルギーを抑える注射を打ったり、ウイルスの抗体価を調べてワクチンを延期したりすることもあります。
《ワクチンを安全に受けていただくために》
体調が良い日にうつ
接種後は30分くらい病院内あるいは病院の近くで様子を見てもらう(すぐに対応できるように)
ワクチンはなるべく午前中に(夕方に接種した場合、夜間に症状が出る可能性があるため)
接種後はよく様子を見てもらう(よく見れる日に接種する)
接種後、1日はシャンプーや激しい運動は避ける
そして、何か気になることがあったらご連絡ください。
また、複数回ワクチンを受けていて今までアレルギーが出ていなくても、今後出る可能性もあります。
健康を守るためのワクチンです。安全に受けていただくために心に留めて頂ければと思います。
犬の歯について
こんにちは、獣医師の座古明奈です。
今回は犬の歯についてお話させて頂きます。
犬には上顎20本下顎22本の計42本の歯があります。猫は上顎16本下顎14本の計30本です。
犬は口の内のがアルカリ性のため虫歯になりにくいのですが、歯周病にはなり易いです。
歯周病は歯石の蓄積や細菌の増殖が原因で、歯茎の痛みや腫れ・出血・歯のぐらつきなどが起こる病気です。
歯周病を防ぐためには、歯石がつかないように歯磨きによるケアが重要です。特に、歯周ポケットまで歯ブラシでケアすることが必要です。
この部分は特に歯石が溜まりやすいです。
歯磨きを嫌がる子は多いですが、歯周病は口臭だけでなく病気の原因(鼻炎、下顎骨折など)になることもあるので、なるべく綺麗な状態に保ってあげましょう。
歯磨きの仕方など、わからないことがあればいつでも聞いてください。
グレインフリーの食事
こんにちは。獣医師の上嶋です。
最近注目されている、グレインフリーですが、ペットフードでも、グレインフリーと記載された食事をしばしば見かけるようになりました。
グレインフリー=穀物を使用していない食事であり、主に穀物にアレルギーを持つ動物や、穀物の消化が苦手な動物で有効とされています。
(ちなみに、似た言葉として、グルテンがありますが、グルテンは麦類に含まれるたんぱく質のことで、グレインフリーであれば、必然的にグルテンフリーということになります。)
しかし、2019年に、米食品医薬品局(FDA)から、グレインフリーのペットフードを食べている犬で、拡張型心筋症の発症が増えるという調査報告が発表されました。
拡張型心筋症とは、心臓の筋肉が薄くなり、動きが悪くなる病気で、本来はドーベルマンやボクサーなどの大型犬に多いとされていますが、近年、比較的小型の犬に拡張型心筋症が増えており、食事内容の調査を行ったところ、グレインフリーフードを食べている犬の割合が多いということが分かりました。
また、グレインフリーフードを食べていた拡張型心筋症の犬が、食事変更後に心筋症の改善が認められたとの報告もあります(Journal of Veterinary Cardiology 2019:21,1-9)。
ただし、グレインフリーと拡張型心筋症の因果関係は不明であり、グレインフリーが体質に合っている子もいるので、現在グレインフリーを食べている犬の食事変更が推奨されるわけではありません。
栄養は、心臓に限らず、動物の健康状態に密に関わっており、私たちも、ご家族からお話を伺う際、食事内容の確認はとても大切だと考えています。食事の内容を迷われている方は、お気軽に病院スタッフにご相談下さい。
子犬の咳
こんにちは、獣医師の渡邊です。
もう少しで4月、新生活を迎える方も多いと思いますが、今回は子犬の新生活で起こりやすいケンネルコフについて取り上げてみたいと思います。
ケンネルコフ(kennel cough = 犬舎での咳)は犬のパラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、Bordetella感染などにより発症する、呼吸器感染症です。
接触により感染は拡大するため、同居犬にも注意が必要となります。
主な症状は咳ですが、それ以外全く症状が認められないことも特徴です。
(ただし、重度の場合には肺炎を併発し、呼吸状態の悪化が認められることもあります)
治療は咳を抑えること、そして二次的な感染を防ぐための抗生剤治療になります。
適切な治療が行われれば、命に関わることはほとんどありません。
そんなケンネルコフですが、よくある発生状況として、ペットショップ→家庭などの環境変化によるストレスが挙げられます。
子犬を新しく迎える予定がある方は、是非とも頭の片隅に入れておいてください。
ただし、他の病気の可能性もあるため、自己判断はせず、動物病院を受診して頂ければと思います。
では、来年度もよろしくお願い致します!
発作のお話
最近は寒暖の差が激しいですね。みなさま体調を崩されていませんでしょうか?
寒暖の差と花粉症とも戦っている獣医師の皆川です。
立て続けに診察する機会がありましたので、発作のお話を、
1)発作ってどんな症状がでるの?
2)どんな病気で起きるの?
3)どんな検査するの?
4)もし起きたらどうしたらいいの?
の4つに分けてお話しします。
1)発作ってどんな症状がでるの?
**********
・泡を吹いて足をバタバタしてます!!おしっこもらしています!!
・バタバタは落ち着いたんですが、立ち上がれずにぐったりしています!!
・立てるようになりましたが、同じ方向にぐるぐる回っています!!目が見えてなさそうです!!
・ずっとバタバタが止まりません!!
**********
あくまで一例ですがこんなお電話をいただくことが多いです。
こんな内容を聞くと ”はやく発作を止めてあげないと…!”と気が引き締まります。
2)どんな病気で起きるの?
こんな状態になってしまう病気はたくさんあって
**********
①脳:てんかん、脳腫瘍、脳炎、脳出血、脳梗塞 …
②脳以外:低血糖、低カルシウム血症、門脈体循環シャント、腎不全、中毒 …
**********
などがあります。
3)どんな検査や治療するの?
身体検査、血液検査、MRI検査を行います。主に、
**********
・目の動きや体の向きなど見た目の異常がないか
(病気の場所がわかることがあります)
・肝臓、腎臓の機能や血糖値、カルシウム値に異常がないか
(②の病気は血液検査でわかることが多いです)
・脳自体に異常がないか
(①の病気の診断に役立ちます)
**********
といったことをみています。
診断したら病気そのものに対する治療や発作止めのお薬を始めます。
4)もし起きたらどうしたらいいの??
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・かかりつけの先生に電話して、どうしたらいいか聞く
・可能であれば発作を動画をとる(携帯やスマートフォンでOKです)
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をしてみてください。
動画は
・失神
・行動異常
などの発作に似た症状になる病気を見分けるのに役立ちます。
苦しがっている姿を撮影するのは心苦しいですが診断にとても役立つので、人手があれば撮影をお願いします。
今の挙げた発作は代表的なもので、ほかにも
・足がつっぱるだけ
・よだれが出たり、明らかな異常がないのにお腹が痛そう
・謎の行動をとる
・急に脱力する
など、まだまだいろんな種類の発作があります。
もし、気になる点がございましたら、スタッフまで教えてください。
よろしくお願いします。
皆川
動物とヒトの感染症
こんにちは、獣医師の中嶋です。
コロナウイルスが世界的に感染拡大し、香港では、感染した女性が飼育していた犬からウイルスの陽性反応が出ました。
感染症の中には、ヒトから動物に感染したり、動物からヒトに感染する病気があります。
この感染症をzoonosis(人獣共通感染症)と呼びます。
今のところ新型コロナウイルスが犬や猫からヒトに感染した例はありませんが、もちろん犬からヒトへ感染したり、猫からヒトに感染する病気もあります。
そこで、ご家庭で実践できる感染予防法を紹介したいと思います。
・動物と触れ合ったらしっかり手を洗いましょう
手洗いは感染症予防の基本になります。手に病原体が付着したままご飯を食べたり、目をこすったりすることで感染が成立します。
・過度の接触を控えましょう。
感染症の多くが口から体内に入ります。愛犬・愛猫とキスをしたり、同じ食器でご飯をあげるのは控えましょう。
動物たちは良きパートナーであり、感染症について過剰に恐れる必要はありません。
適切な予防を実践しヒトと動物の健康を守りましょう!!
猫の排尿異常について
こんにちは、獣医師の杉野です。
だんだんと寒くなってきましたね。
寒くなってくると、排尿異常で病院にいらっしゃる猫さんが急増します。
頻繁にトイレに行く、血尿が出る、尿が少しずつしか出ない、トイレに長い時間座っているのに排尿していない、などなど・・・
こういった症状は膀胱炎や尿石症のサインかもしれません。
猫さんは基本的に暖かいところが好きな動物なので、寒いと動くのが億劫になりトイレや水を飲みに行く回数が減ってしまいます。
そして気温が下がることで飲水量が少なくなると、尿が濃縮します。
さらにトイレを我慢してしまうので濃縮された尿が膀胱内に溜まっている時間が長くなってしまうので、膀胱炎や尿石症を発症しやすくなります。
こういった事態を防ぐためにお家で簡単にできる工夫をいくつかご紹介します。
・部屋の温度を常に暖かくしておく
・水飲み場をいくつか設置する
・水をぬるま湯にする
・ドライフードをふやかしたり、ウェットフードに変更する
・トイレをきれいに保つ
・トイレの数を増やす
しかしどれだけ気をつけていても、猫さんは体質的に尿路系の病気になりやすいので、頻尿や血尿の他にも「いつもとおしっこの様子が違うな」と思ったらなるべく早くご来院くださいね。