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整形外科

いろいろな犬の骨折の治療方

 高いところから飛び降りたり、交通事故にあってしまったり動物病院には様々な理由で骨折してしまったワンちゃんやネコちゃんが来院されます。

小型犬人気が高まっている昨今では、ソファーからの落下で前足を骨折してしまう子が後を絶ちません。

 整形外科では骨折の部位、程度、年齢などから似たような骨折でも様々な治療方法を検討・実施しています。

 軽度の骨折(剥離骨折や部分骨折)では手術を行わず包帯で完治することもありますが、多くの子は手術による整復が必要となります。

今回は骨折の際に当院で最も行われているプレート法について今回は簡単にご紹介したいと思います。

 プレート法とは骨折部位を目視または特殊なX線装置を用いてみながら骨折の断端部をぴったりと合わせた後に、金属製(ステンレス、チタン)のプレートを骨にあて、ズレないようにスクリューで固定します。

包帯法と比べてズレの少ない整復が行えます。

また、人の場合は後々プレートを抜去することが多いですが、ワンちゃんネコちゃんの場合は問題が無ければそのまま置いておくことが出来ます。

 ケガをしないことが一番ですが万が一骨が折れてしまった場合は整形外科にご相談ください。

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手術前X線画像

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手術後X線画像

獣医師:中嶋恒介

 

整形外科手術の後の安静

こんにちは、看護師の後藤です。

最近めっきり寒くなりましたね。

みなさん、診察の際、獣医師に「2.3日安静にしてください」や、「2週間安静にしましょう」と言われたことはありませんか?

最近、僕自身、整形外科の診察に入らせて頂くようになり、みなさんから安静が難しいと言った声をよく耳にします。

一言に安静と言われても、わかりにくいかと思います。

ですが、特に整形外科など、運動に直接関わる部分の病気や障害(骨折など)は安静が何よりも重要となります。

整形外科は折れた骨をプレートなどで固定する方法以外にも、骨を切って正しく治癒するように意図的に骨を切ったりします。

そうして折れたり、意図的に切った骨は治癒するのに約2.3ヶ月の時間を要すると言われています。

骨が適切に治癒するまでは、金属の板と金属のネジでいわゆる仮止めをしている状態なので、その状態で強い力がかかると簡単に曲がったり、折れたり、ネジが緩んだりしてしまいます。

そのため獣医師からは時に厳しく運動の制限を指示されることがあります。

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こちらが実際に骨を固定するプレートと呼ばれるものです。比較で綿棒と写してみましたが、小さいですね。

とても小さいので、強い力がかかるとすぐに曲がります。

安静って難しいですよね?ですが、とても大事です。

とくにケージレストといってケージに入れて安静を指示されることがあります。

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このようにケージに入れておくことをケージレストといいます。

…でも入れるとワンワン吠えて逆に暴れてしまうのでは?と心配される方も多くいらっしゃます。

ですが、家の中で自由に歩き回り、フローリングなどで足を滑らせたり、思わぬ瞬間に突然走ってしまったりすることはとても危険ですし、人間には快適なソファも犬にとっては大きい障害で、そこに飛び乗ったり、飛び降りたりする危険があります。

家を自由にさせているとそうしたことを完全にさせないようにすることは不可能に近いと思います。

犬は痛みが落ち着くと元気になりますが、骨や靭帯、筋肉の治癒には時間がかかります。

そうした意味でも囲われた安全なところで運動を制限する必要があります。

整形外科手術後の安静の仕方によって、治癒にかかる時間も変わってきます。

たとえ、手術が100%成功したとしても安静が上手くできなければ最終結果が変わってきますし、もう一度手術になってしまうとお金もまたかかってしまいます。

そうならないためにも、普段の生活からケージでの生活に慣れているといいと思います。

元気な時であればみなさんも吠えたり、鳴いたりしても心配なことは少ないと思いますので、日常生活の中でケージで過ごす時間を取り入れてみてください。

お留守とかではなく、普段の何気ない時間に入れてみるところから始めるといいと思います。

慣れるまではワンワン吠えると思いますが、そこは心を鬼にしていただいてあえて反応しないようにしましょう!そうすると諦めて落ち着いて寝ると思います。

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私の飼っている栗王(クリオ)くんもケージに入れてはじめはワンワン、クゥンクゥン、うるさいですが、しばらくすると寝ています。

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ケージレストに慣れておけば、整形外科手術後の安静だけでなく、入院しなければいけないときや、ホテルに預ける際のストレスが減るのでとてもいい事だと思います。

整形外科を受診する動物について

整形外科担当の獣医師の福田です。

整形外科を受診する動物は関節疾患や骨折により”痛み”があります。

大抵の場合手術やお薬での治療により痛みが緩和されると動物は元気になり、活発になっていきます。

しかし、手術や治療をしてすぐに元の生活に戻れるわけではありません。

人の場合で考えていただければよくわかると思うのですが、しばらくは松葉杖をついたり、ギブスをしたり、サポーターをつけたりします。

これは動物も同様で、身体の組織が修復し安定するまでにはどんな治療をしても時間薬が必要となり、治るまでは無理をせず安静にする必要があります。

しかし動物は人と違い、自分で安静にしたり使い過ぎないようにコントロールすることができません。

痛みが取れたらすぐに走ろうとしますし、跳びはねることもします。

つまり、ご家族が動物が安静にできる環境を作り、安静にできるようにコントロールしなければ動物は自分では大人しくすることはないのです。

いつも私達は手術を受ける患者様にお話することは、手術と同じくらいこの術後の安静が重要であるということです。

動物を安静にすることは簡単ではありません。

よく動物をケージに入れておくとずっと鳴いていて可哀想とおっしゃる方がいらっしゃいます。

しかし全く可哀想ではありません。

上手く行かなければまた手術が必要になるかもしれないし、100点満点の結果が得られないかもしれません。

それは動物にとってハッピーなことでしょうか?

動物は自分の状況を理解できていませんし、私達の言葉は通じません。

動物の治療にはまずご家族の意識を変えていただくことが重要です。

ご家族がこの子のためにやっているんだという確信を持たないと、動物もいつまでも諦めずに訴えるでしょう。

そして本来は、ケージの中に入る習慣を普段からつけることです。

慣れていればこのような怪我をした時だけでなく、ホテルに泊まる場合などにも動物のストレスは少なくなります。

人と同様、可愛がるだけが動物を愛することではありません。

動物との生活をより良いものにするために是非一度そのようなことも考えて普段の生活を送ってみてください。

犬の整形外科疾患(前十字靭帯断裂)

獣医師の福田です

一瞬のうちに夏が去り、少し肌寒くなってきました。

寒さが苦手な私にとってはちょっと朝夕が辛いのですが、動物たちにとってはとても過ごしやすく、またお散歩が楽しい時期ではないでしょうか。

そんな時期、お散歩の時間が増えてかどうか、当院の整形外科には跛行のある患者さんがよくご来院されます。

特に最近多いのは膝の前十字靭帯に問題を持った犬です。

前十字靭帯断裂は犬の整形外科疾患で最も多い疾患と言っても過言ではありません。

それゆえ、世界中で開発された手術方法は50種類以上あるとも言われています。

なぜそんなに沢山の方法があるのか。それは未だにその原因が分かっていないからです。

人の前十字靭帯断裂は大抵がアスリートなどが外傷により起こします。

しかし犬の場合は、明らかな外傷がなくても突然切れてしまうことがあるのです。

それゆえ、犬の前十字靭帯断裂は疾患と言われています。

考えららている原因は肥満、ホルモン、免疫介在性関節炎、骨の形態的異常など様々ですが、それらが靭帯を徐々に変性させることで靭帯が弱くなるため断裂を起こす言われています。

つまり、犬の前十字靭帯断裂は徐々に起こっていて、最終的に完全に切れてしまうのです。

では、前十字靭帯が徐々に切れているとき、完全には切れていない時は犬はどのような症状を出すのでしょうか?

これはとてもはっきりしない症状が多く、軽い跛行ですぐに治ったり、お座りがきれいにできないだけということもあります。

このような症状は数年にかけてたまに発生し、完全に切れた時には足を挙げることになります。

前十字靭帯断裂の治療には手術が必要なのですが、特に早期に、完全に断裂していない時に手術を行うと関節炎の進行を大幅に食い止めることができるという報告もあります。

ですから、お散歩の時に少し注意をして歩き方や仕草を観察してみてください。

軽い跛行が起こったり、おすわりがうまくできないのはもしかしたら前十字靭帯に問題があるかもしれません。

ワンちゃんの骨折治療

こんにちは。獣医師の庄山です。

 

最近梅雨に入り、ジメジメとした雨の日が続いています。

私は去年自転車から転倒して手を骨折しました。現在骨はくっついていますが、湿度の高い最近は骨折部が痛むことがあります。皆さんも季節や天候により関節や骨が痛むことを経験したことがあるのではないでしょうか。

ワンちゃんも何かのアクシデントで骨折することがあります。特にトイプードルやヨーキー、パピヨン、ポメラニアン、イタリアングレーハウンドなどの小型犬の前足の骨折が近年増えています。その理由としては

①     前足の骨が非常に細長い

②     ぴょんぴょん飛び跳ねたりジャンプするのが大好き

③     日本で暮らしている小型犬の頭数(約18万頭)が多い。

などです。

特に1歳未満の若いワンちゃんは骨が軟らかく、ソファーから飛び降りただけでも骨折してしまう子もいます。

今回は当院の中でも特に骨が細かったワンちゃんの骨折治療をご紹介したいと思います。

 

チワワさんが抱っこの状態から誤って落ちてしまい、前足を骨折しました。

下の写真はその時のレントゲンです。 前足の手首に近い部位で斜めに骨折しているのがわかります

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骨折していない前足

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骨折している前足

 

骨折の治療は大きく分けて2種類あります。手術かギプスなのですが、骨が細いワンちゃんの場合ギプスでの治療が難しいことが多いです。この子の場合、骨の太さは4.7mmと非常に細く、骨折部がたった1mmずれただけも20%以上ずれることになります。その場合骨がうまくつかないことがあります。

ご家族との相談の結果手術をすることになりました。

 

手術に使用したプレート(特殊な金属の板)は薄く、スクリュー(プレートと骨をくっつけるネジ)は直径1mmで長さは5mmしかありません。

手術方法は骨にネジ穴を開けて、スクリューでプレートを骨に固定します。口で言うのは簡単ですが、非常に繊細で難しい手術です。しかし、当院では経験豊富な整形外科専門医が実際に手術を実施しているのでご心配にはおよびません。

下の写真は手術後のレントゲンです。

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手術直後

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手術後2週間

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手術後4週間

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手術後8週間

手術後すぐに骨折した足が使えるようになりました。

手術から2ヵ月で通院は終了し、今現在元気に走り回っています。

骨折は予防が可能なアクシデントです。ご自宅で実施できる予防策はいくつかあります。

・家具の上からの飛び降りを制限する

ソファーに階段を付ける、ソファーやいすに一人で乗せないようなしつけ

・床が滑らないような工夫

じゅうたんやカーペット、クッション性の高い床材(コルク性など)

・お散歩

ストレス解消のためにも外で十分な運動量確保し、室内で過度に運動させない。

小型犬の骨折はたいてい室内で起こります。

 

自分で骨折を経験された方はわかると思いますが、骨折すると非常に痛いですし治療期間はつらいものです。

小型犬の骨折が少なくなるように、以上のような飼育環境の整備をぜひお願い致します。

 

 

動物の整形外科手術の裏側

こんにちわ。

整形外科の福田です。

整形外科は骨や関節を治療する診療科ですが、他の外科と大きく異なるのは骨折や関節の動揺が治癒するまでの間、インプラントと呼ばれる金属のネジやプレート、溶けない強い糸などを体内に設置して支持することです。

インプラントを設置するためには様々な器具が必要になります。

例えば、ネジを骨に入れるのにも、パワードリル、ドリルビット(穴を開ける)、デプスケージ(深さを測る)、タップ(ねじ山を作る)、スクリュードライバー(ネジのドライバー)などが必要になります。

ですから、整形外科の手術を行う時は大量の器具が器具台の上に並んでいます。

また、我々は様々な大きさの動物を手術するので、常にたくさんのサイズの器具やインプラントを揃えておかなければなりません。

これらの器具は、非常に精密で、しかも我々が使用するには滅菌(細菌、ウィルス、微生物が器具にない状態)状態にしなければなりません。

これらの洗浄、数の確認、滅菌などの作業は非常に手間がかかるのですが、看護師さんがマニュアルに沿って行ってくれています。

手術というのは、外科医が一人いれば出来るものではありません。

助手や麻酔医、器具係、外回りなどはもちろんのこと、このような器具を管理してくれるスタッフが居るので成り立つのです。

皆さんが手術を受けられるときには、一人の獣医師しか会わないかもしれませんが、患者さんのために多くのスタッフが力を合わせていることを少し知っていただけると嬉しいです。

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( ぼくはみんなを癒すスタッフだよ! by りゅうくん)

整形外科担当の福田です。

 


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埼玉動物医療センターでは、近隣の動物病院様にご参加いただける専門科の勉強会(オープンセミナー)を定期的に開催しています。

先日は整形外科外来を担当している私、福田が担当させていただきました。

通常講師は一人なのですが、今回は外傷治療をテーマに、副院長の石川先生にもお手伝いいただきました。

といいますのも、当院では外傷治療のような緊急対応はまず総合診療科で全身状態を確認されます。

交通事故や喧嘩などでの外傷は、命にかかわる問題、具体的には呼吸がうまく出来ていなかったり、おなかでの出血がないかなどを確認することが最優先されます。 

そこで問題がなければ、骨や関節に異常がないかを精密検査してくことになります。

つまり、私の仕事は命に関わる問題がない、もしくは解決されてから始まるわけです。

このように埼玉動物医療センターでは、様々な専門科がチームで治療に取り組んでおります。

 

サッカーワールドカップ、日本は惜しくも敗退してしまいましたが、医療もサッカーのようにチームプレーが大事です。

埼玉動物医療センターでは、恐らくザッケローニが院長、金園先生が本田で、石川先生が遠藤、僕がウッチーというところでしょうか。

ご批判のメールは受け付けておりませんのであしからず。